LCCの欠航で飛行機のチケット代を超える補償がもらえた話 EU261法とは

easyJet U24066 at ORY airport

パリで搭乗予定だったLCCキャリア”easyJet”の早朝便が、技術トラブルによる機材ぐりを理由に欠航しました。10時間も後の便(しかも別空港)に乗るハメになりました。バカンスの予定が大幅に狂ってしまい怒り心頭。

しかし、ヨーロッパでは、航空会社に遅延や欠航の補償が法律で義務付けられていることを知り、旅行後にダメもとで請求。すると、チケット代を超える補償を受けることができました。結果的に、大人2人がパリとニース間を無料で往復し、3日間のレンタカーを含めて1万2,000円で旅行できました 😉

大幅な遅れやフライトのキャンセルが少なくないLCCですが、 いざという時には「補償」を受ける権利がある と知っていると少しは気が楽ですね。

“easy Jet”でパリ>ニース便を予約

flight rouet U24063 ORY to NCE. Image is screen capture of "Flight rader24" apps.すべては、この夏のフランス・ニース(コート・ダジュール)への旅行に”easy Jet”のチケットを買った時から始まりました。

およそ900キロのパリ-ニース区間は、高速鉄道TGVで約6時間。飛行機は1時間40分ほどなので、「のんびりと汽車旅をしたい」などの目的がない場合は、飛行機を利用する人が多いルートです。

航空会社は、レガシーキャリアの「エールフランス」と格安LCCの「easyJet」が頻繁に直行便を運航しています。両者の差額は、繁忙期の7月で1万円ほどでした。ただ、レンタカーを一緒に予約するとeasyJetの方が割引率が圧倒的に高く、トータルの旅行代で考えると差はさらに広がりました。

できれば遅延や欠航のリスクが高いLCCは避けたいのですが、ここは迷いどころです。短距離便でフライト時間も短いので、シートなどの設備や機内サービスはあまり関係ありません。最終的には、ビジネス出張でなく多少の遅れは許容できたので、安さをとってeasyJetを選択しました。

EZY4063便の代金

フライトのおよそ1か月前に予約したところ、大人2人でフライト代は371.61。3日間のレンタカーとあわせると636.16でした。

日付備考数量価格()
easyJet合計636.16
パリ(オロリー)

ニース
7月17日EZY40632107.98
ニース
パリ(オロリー)
7月19日EZY4066267.98
カード決済手数料126.29
追加手荷物料20kg2101.4
航空税(APD)467.96
フライト小計371.61
レンタカー(3日分)1264.55

セット割引の条件が良かったレンタカー

悲劇は突然やってくる!まさかの欠航

orlyairport-departure

早朝のオルリー空港

8:30AMの早朝便にあわせて7:00AMにはオロリー空港に到着。天候は快晴で、早くニースのビーチで泳ぎたくて心躍ります。ところが、空港のディスプレイには「遅延1時間」の表示が出ています。まぁ、LCCなのでこういうことは珍しくありません。多少の遅延は織り込み済みなので、とりあえず搭乗口で待つことにしました。

しかし、予定時刻が過ぎても一向に搭乗が始まる気配はなく、いきなり「欠航」のアナウンスが流れました。「はい!?」さらなる遅延じゃなく欠航・・・?グラウンドスタッフによると、前の便に技術的なトラブルが発生し、オロリー空港に飛来したものの整備が必要になったとのことでした。「制限エリアを一旦出て、カウンターの職員の案内に従ってください」と促され、落ち込みながらターンテーブルで預け荷物を受け取り、カウンターに向かいました。

カウンターは長蛇の列、クレームの雨嵐

カウンターにはすでに長蛇の列ができていました。職員はわずか2人で対応していて、少なくとも1時間以上並ばなければなりません。「LCC最悪だな・・・。」一気に不満がピークに達します。さらに7月のハイシーズンだけあって、その日にオロリー空港からニースに向かうeazyJet便はすでに満席。LCCなので他社便への振り替えなど期待できるはずもなく、このままオロリー空港で待っていても飛行機に乗れそうもありません。「ホテルもレンタカーも予約してるのに、どうしてくれよう!何とか今日中にニースに行かなくては!」と焦りが募ります。

列に並ぶのも辛い時間です。怒りで声を荒げるフランス人もいれば、涙を浮かべるおばあさんもいます。それぞれに事情があるのでしょう。そうした人達を横目に、スマホでもう1社のエールフランス便を調べると、ごくわずかに空席が残っていました。ただ、ハイシーズンの正規料金なので、もともと予約していたeasyJetの便の3倍を超えるびっくり価格。躊躇しながら「6時間かかってもこの際仕方ない」と高速列車TGVも調べると、こちらは満席。快晴の空港で、いきなり窮地に陥ってしまい落胆もひとしおです。

「全額払い戻し」か「翌日便」か・・・

空港に来てから4時間が経過。本来であればニースのビーチにいたはずの11:00AMごろになってようやく順番が回ってきて、カウンターのeasyJetの職員と対面。スタッフの皆さんも大変です。ほかの乗客からクレームの雨嵐だったのでしょうか、表情には疲れが浮かんでいます。カウンターで告げられたのは、(1)全額の払い戻し、(2)指定されたホテルに泊まってあすのeasyJet便に乗るというオプション。

やはりエールフランス便への振り替えはできず、「どうしても乗りたければ、全額払い戻しを受けて自分で手配してくれ」「その際の差額はeazyJetは負担しない」ということでした。エールフランス便はびっくり価格なので即決できずにいると「シャルル・ド・ゴール空港でよければ夜に出発するeasyJet便にわずかに空きがある。それに乗るか?」とのオファー。ただし「タクシー代は出せない。移動は自分たちでしてくれ」とも言われました。

シャルル・ド・ゴール空港(CDG)便に振り替え

この日のニースでの予定は吹き飛びましたが、当日にたどり着くために背に腹は代えられません。やむを得ず今いるオロリー空港ではなく、シャルル・ド・ゴール空港からニースに向かう夜の便への振り替えを選びました。振り替えは、19:15PMに出発するEZY3997便(もともとの便は8:30AM)。非常用に確保してあるのでしょうか、席は最前列の1Aと2Aが割り当てられていました。

Email from easyJet that notifies flight has changed to EZY3997. Seats have been assigned the front row 1A and 1B.

振替便が決まった後に送られた来たメール

オロリー空港からシャルル・ド・ゴール空港までは22のシャトルバスがあります。渋滞にはまらなければ、およそ1時間でたどり着けます。どうせフライトまでは7時間もあるので、バスで移動することにしました。1日を棒に振るとはまさにこういう日のことを言うんでしょうね。

easyJet at CDG airport

シャルル・ド・ゴール(CDG)空港に駐機するeasyJet機

easyJet at CDG airport, persons waiting for boarding

パリ>ニース便に登場する乗客

ホテルに到着したのは深夜

Le Méridien Beach Plaza, Monte Carlo Hotel
実はシャルル・ド・ゴールを出発する便も45分遅れました。もはや笑うしかありませんね、トホホ。ニースの空港に降り立ち、レンタカーを借りて予約していたニース(の隣にあるモナコ)のホテルに着いたのは深夜のことでした。



乗客への補償を定めたEU261法とは

ことの顛末を詳しく書きましたが、やはり「LCCはリスクが高い」という教訓が残りました。 安さをとった代償に、楽しい旅行が台無しになることもあります。 私の場合は1日がすっかり飛んでしまいました。旅行者にとっては大きな痛手です。

一方で、当日は怒り心頭でしが、後になって振り返るとeasyJetは「リーズナブル」な対応をとっていることも分かります。他社便に振り替えられないのはもともとそういう規則ですし、欠航にともないeazyJetは全額返金も申し出ています。

ただ、失われた時間はチケット代が払い戻されたところで返ってこないのも事実で、EU圏では乗客保護の観点から遅延や欠航に対して、航空会社の「補償」を法律で定めています。

eu261 law screen capture from eur-lex.europa.eu

EU261法(2004年)の条文

チケット代にかかわらず補償

EU261法は、チケットをいくらで購入したかに関わらず、大幅な遅延や欠航、それにオーバーブッキングによる搭乗拒否について250から600の補償を定めています。航空会社によって補償の考え方や対応はさまざまですが、 対象便についてはこの法律が航空会社の規定よりも優先します 。EUを拠点とする航空会社は、もとよりこの法律に従って規則を決めているはずなので齟齬は生じないはずです。

補償対象の例
  • EUを出発する飛行機
  • EUを拠点とする航空会社でEUに向かう便
  • 指定された時刻までにチェックインを済ませた乗客
  • 結果として別の便に搭乗した乗客(旅行の事実がある)
補償の対象外のケース例
  • EUを拠点としない航空会社でEUに向かう便(ANA/JAL東京→パリ便など)
  • 一般には入手できない無料チケットや割引チケットの乗客(※マイル特典航空券は除く)
  • 欠航の場合、航空会社が2週間以上前に知らせた場合など
  • 航空会社に責任が無い遅延や欠航

細かい条件もあり

航空会社が遅れや欠航を乗客に知らせたタイミングや、もともとの旅程の直線距離、実際の遅延時間などによって補償額は変わってきます。EU261法では細かく規定してありますので、詳しくは原文を参照してください。

補償を請求する方法

EU261法は、リフレッシュ費用(飲食)や交通費(空港までの交通費)など関連出費の弁済についても定めていますので、どこまでが対象となるかはさておき、余分にかかったと自分が思う費用については領収書を保管して置くことが大切です。

その上で、easyJetを含むヨーロッパの航空会社で大幅な遅延や欠航が発生すると、補償の「申請フォーム」を案内されます。これは、対象の乗客にEU261法の存在を告知することもまた航空会社に義務付けられているからです。

私の場合は、搭乗後にeasyJetから補償を申請するためのURLが書かれたメールが届きました。後はそのフォームに従って、余分にかかった費用を領収書の画像をアップロードしながら申告するだけです。手続きとしては法的な知識も必要ありませんし、ましてや航空会社を裁判で訴える必要もありません。

1人250の補償が決定

ダメ元でシャルル・ド・ゴールのレストランでランチした代金60ほどや、ロビーで待つのは疲れるので休憩のためにとった空港近くのホテル代50ほども申請してみたのですが、残念ながら認められませんでした。

逆に認められたのは、オロリー空港からシャルル・ド・ゴールへのバス代44。それと 欠航にともなう補償として1人250でした 

email from easyjet EU261 Compensation

easyJetから届いたメール。1人あたり250ユーロを支払うと記載されている

補償額が決まると送金のために銀行口座を連絡するよう指示があります。口座は日本のもので構いませんが、外貨のユーロ建てで送金されるので、外貨口座を指定しておくのが良いでしょう。

海外送金した経験がある方は分かると思いますが、海外口座に向けた送金には必ず必要となる情報があります。銀行名や支店住所、それにSWIFTコードなどを予め調べて、すべて英語表記にして相手に伝えておくとスムースです。

MEMO
easyJetに伝えた口座情報(例)
Account holder name: NIPPON TARO
Bank name: XXX
Account number: XXX-XXXX-XX-XXXX
SWIFT code: XXXXXXX
Branch name: XXX XXXXX
Branch address: XXXX, Japan
Branch telephone:(+81) X-XXXX-XXXX
Address of account holder: XXXX, Japan
Telephone of account holder: (+81) 90-XXXX-XXXX
easyJetからは、単に「あたなの振り込み口座を教えてください」と連絡があり、細かい指示はありません。ただ経験上、どんな情報を伝えれば滞りなく国際送金してもらえるのか分かっていたので、上で列挙した項目を書き出してメールで伝えました。実際に、この情報でeasyJetも1発OKでした。

筆 者




取り立て代行会社”AirHelp”を利用するのも選択肢

notification mail from airhelp

Airhelpからいきなり届いたメール 162ユーロの賠償金をゲットしましょうとうたっている

余談ですが、Air Helpという会社が、乗客に代わって航空会社に賠償金を請求してくれる補償代行サービスを行っています。ヨーロッパではその名が知られた存在のようですが、私は全く知りませんでした。

そんな会社から、帰国後にいきなり「162ユーロの賠償金をゲットしましょう!」と銘打ったメールが届きました。下に示したこのメールは、AirHelpの名はまったく出てきません。easyJetからの通知かと思ってクリックすると、AirHelpのサイトにつながりました。

AirHelpがどのように私の便の欠航を把握できたのか不審に思って調べると、私が使っている旅程管理サービス「tripit」と提携関係にあるようで、私の旅程→tripit→AirHelpという具合に情報が流れていたことが分かりました。

それはそれで良いとして、AirHelpが提供するサービスは、要するに”取り立て”の代行です。飛行機の賠償請求に絞った弁護士業務とも言えます。

自分に法的な権利があるか分からない人や、権利があるのは知っていてもどのように請求すればよいか分からない人などを対象に、簡単な質問と数回のメールのやりとりをするだけで、乗客に代わって航空会社に権利を主張・請求してくれます。航空会社が賠償に応じなければ、乗客に代わって訴訟も起こしてくれます

screen capture from Airhelp website

Air Helpのウェブサイト

餅は餅屋というように、「補償」をめぐるノウハウについては精通しているはずなので、こういう代行会社を利用するのも一つの選択肢ですね。ヨーロッパだけでなくアメリカも対象としているようです。

なお、AirHelpの利用料は、得られた補償額の25%です。補償が得られなければ料金はかからない 完全成功報酬 ですので、気軽に利用できます。

注意したいのは、わざわざAirHelpの手を借りなくとも、航空会社が自前で用意している申請フォームを使ってすんなりと請求が通るケースもあります。私がそうでした。航空会社がきちんと対応するのであれば、直接請求した方がお得です

補償をもらったら格安旅行になった

下の表は補償額を入れた旅行代金です。フライトのチケット代よりも補償額が多いため、 結果的に飛行機代は無料 になったことになります。

フライトルート日付備考数量価格()
最終的な旅行代金136.16
パリ(シャルル・ド・ゴール) ニース7月17日EZY4063→EZY3997へ振替2107.98
ニース パリ(オロリー)7月19日EZY4066267.98
カード決済手数料126.29
追加手荷物料20kg2101.4
航空税(APD)467.96
フライト小計371.61
レンタカー(3日分)1264.55
easyJet合計636.16
便振替による移動バス代244
EU261法による補償44
EU261法による補償500
私の場合は現地でのレンタカーも一緒に予約していたのと、この表には含めていないホテル代がありますのでさすがに黒字にはなりませんが、少なくともeasyJetに払った額が636.16から136.16へ、日本円にして6万6,000円も安くなったのは事実です。
人によっては、チケット代が無料になるばかりか黒字が出るケースも十分考えられますね。

筆 者

EU261法による補償が受けられることが分かっていたら、夜のeasyJet便への振り替えでなく、昼のエールフランス便に乗っても良かったなとちょっぴり後悔もしています。

いずれにせよ、予期せぬ欠航によって大切な時間を失い、精神的なダメージは大きかったものの、補償でずいぶんと溜飲が下がりました。遅延や欠航は無いに越したことはないのですが、不幸にもあなたがヨーロッパで私のようなケースに巻き込まれた場合は、この記事が少しでも参考になれば幸いです。

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